| 自民党第5選挙区支部の有志が党員大会を開いた理由は、概ね次のような理由による。 @昨年6月の衆議院選挙後、自民党本部が第5選挙区支部長を任命していないため、支部長が空白になっていること、Aこのため現支部長代行の斎藤修氏が事実上支部長職にあるが、斎藤修氏は「現在衆議院議員もしくは次期衆議院選挙に立候補する意思がある者」という自民党本部が定めた支部長の条件に該当していないこと、B「年1回支部大会を開催すること」と規約に謳われているのに、平成7年以降、現在に至るまで1度も支部大会が開かれておらず、このため2年に1度の役員改選や予算・決算報告が何ら行なわれいないこと−−などである。 有志とは言うものの、この党員大会開催の案内状は第5選挙区支部内1市13町の支部長のうち11の支部長名が列記されたもの。それだけに重みがあると同時に、これまでの支部運営に如何に問題があったかを物語ろう。 党員大会には第5選挙区支部の全党員530名のうち、本人出席93名、委任状出席が246名が参加。新たな支部長として土井喜美夫氏を選出。この結果を踏まえて、県連と党本部に新体制の了承・任命を要請しているという。 これに対して斎藤修氏は「党員大会の案内状は怪文書の何物でもない。(私は)昨年の総選挙後も支部長職にある。支部の予算・決算は県連、党本部で厳密に審査されており、誰でも県の選挙管理委員会で確認することができる」とマスコミに述べている。 だが、この弁明は正当性を欠いているとしか言いようがあるまい。「問題になっているのは斎藤氏の資格とこれまでの運営の仕方であり、これは党の規約に反している。支部の経理内容は選挙管理委員会で見ることができるというが、本来ならはじめに党員に報告し承認を得なければならないもの。本末転倒だ」(関係者)という主張の方が誰がどう考えても筋が通っているだろう。 一方、この党員大会の開催について、「次期衆議院選に名乗りを上げた齋藤正美県議に対し、同じく出馬表明した土井喜美夫氏が党の公認を得るために企てたもの」という観測が一部でなされている。しかし、これもまた間違った見方と言わざるを得ない。「今回の党員大会は『土井派』を結成するためのものではなく、あくまで第5選挙区支部の再生を期すために各支部長が立ち上がったもの。土井氏が公認候補になるかどうかは、あくまで党本部が決めることで次元が違う」(関係者)ものだからである。 いずれにしろ、この党員大会の結果、第5選挙区支部は事実上分裂したことは間違いない。ここに至るまで支部大会を全く開かず、党員に何ら説明してこなかった斎藤修氏の責任は大きいものがあるし、同時にこのような実情を知りながら静観・放置してきた県連と党本部の姿勢も問われるべきものだろう。 問題は今後、分裂した組織をどのように一本化していくかに尽きる。そのシナリオを地元政界関係者はこう予測する。 「まず、正式な支部大会を開くことになるだろう。 そしてこのとき、県連と党本部の幹部がオブザーバーとして出席する必要があるだろう。支部内の内紛を防ぎ、これまでの実態を把握するには、それしかない。この大会で新たな執行部体制が形づくられることになるが、当然斎藤修氏はこれまでの行きがかり上、辞任するしかない。問題は新たな支部長に誰がなるかだが、スンナリ決まるとは思えず、相当もめるような気がするし、仮りに決まっても、それで一枚岩になれるかどうかは疑わしい」 この政界関係者が不安気な物言いをするのには理由がある。新支部長の選出は次期衆議院選の公認候補と同じ意味をもつからである。折りしも、自民党県連は12月8日に会議を開き、次期衆議院選の公認候補予定者が決まっていない宮城1区・5区・6区について、来年3月末までに公認候補の選定を終えるよう決定した。となれば、新支部長=公認候補は「齋藤正美氏と土井喜美夫氏のいずれかになる」(政界関係者)のは衆目の一致するところであり、同時に「公認候補の調整は難しいだろう」(事情通)と早くも推測されている。 というのも、両氏の陣営は「犬猿の仲とまではいかないものの、反目し合っている」(事情通)ことによる。実際、先の衆議院選では両氏に二見剛氏を加えた変則的なコスタリカ方式を実施したが、共闘体制を組むことなく、そのせいもあって党公認を受けたにも関わらず、土井氏は落選した経緯がある。そのしこりは未だに残っていると言われており、前述したように今回の新支部長選出が次期公認候補と同義ということからすれば、両氏が禅譲するということはまず考えられず、これまで以上に綱引きが激しくなるのは避けられそうにない。 もっとも、こうした両氏の反目に対して、「2人とも自分の力量と政治状況をわかっていない」と一刀両断的に斬り捨てる意見もないではない。政界精通者はこう語るのだ。 「土井喜美夫にしても、齋藤正美にしても、いくら党の公認を受けたにしても、単独では現職の安住淳(民主党代議士)に勝てない。2人がスクラムを組んではじめて勝負になる。ところが、2人はそれをわかっていないようだ。 それに公認候補は2人から選ぶと決まったわけではない。かつてこの地域は保守王国と言われ、自民党の牙城だったところだ。しかも先の選挙で宮城県内の代議士は落選が相次いだことから、党本部と県連は小泉総理の支持率の高さをバネに、次期選挙は何がなんでも必勝体制を敷き、捲土重来を期す覚悟でいる。そんな中で土井と齋藤がゴタゴタしているようであれば、2人とも外して別な公認候補を擁立することは十分考えられる。今期限りで石巻市長を勇退すると見られる菅原康平などは、そうした候補者の最右翼になるかも知れない。土井と齋藤が我を張っていることは、少しも本人たちのためにも、自民党のためにもならないということを自覚しないと──」 要するに、土井氏と齋藤正美氏がこれまでの確執を打ち捨てて、手を取り合うことができるかどうかがカギを握っているということである。そしてその方策としては「コスタリカ方式しかないだろう」(政界関係者)と見られている。 実際、先の衆議院選で土井氏は安住氏に1300票差まで詰め寄ったが、「土井氏単独では如何に自民党公認でも、あれが限界で、あれ以上の上積みは無理だろう」(政界関係者)という声が強い。また、一方の齋藤正美氏の場合は、「県会議員としての知名度はあるにせよ、それは石巻市に限ったもの。1市13町の第5選挙区を対象にする国政選挙では、名前はほとんど浸透しておらず、どれだけ票を集められるかは未知数」(政界関係者)というのが大方の見方になっている。 このことからしても、土井、齋藤両氏が当選するためには、2人が手を握るしか手段はありそうにない。そして両氏が共闘体制を組むことは、現在亀裂が生じている第5選挙区支部にとっても、再生に向けた大きな橋頭堡になることは事実である。裏返せば、両氏が協調しない限り、第5選挙区支部はたとえ斎藤修氏が退いたとしても、混乱が続くことは避けられそうにない。 問題は、そうした大局的な判断を両氏とその陣営ができるかどうかである。この点、今後の動向が注目されるところだ。 もっとも、口で言うほどコスタリカは簡単にできるものではない。「国政に臨む者は選挙区から選ばれることを誇りにしており、比例区を格下に見ている」(政界関係者)のが常だと言われる。このため「土井、齋藤両氏の場合も、調整は難航するだろう」(地元関係者)と早くも予想する声が挙がっている。 では、調整が行き詰まった場合はどうなるのか。 自民党関係者によると、「奥の手」というか「秘中の秘」があり、実はその方法で進めることを、すでに目論んでいるという。関係者はこう洩らすのだ。 「その方法とは、予備選をやることだ。土井喜美夫にしろ、齋藤正美にしろ、どちらも党公認を得たいと考えているし、譲るつもりは全くない。コスタリカをするにしても、オレが選挙区で出ると言い張るだろう。つまり調整は覚束ないことになる。県連や党本部にしても、前回で公認した土井を今回は公認しないというわけにはいかないし、かといって自民党生え抜きの中堅県議の齋藤正美を公認しないわけにもいかない。だからといって、別な候補者を公認したら、第5選挙区支部は収拾がつかなくなる。そう考えた場合、取るべき方法は予備選をやることしかないだろう。これならどこからも文句を言われることはない」 実際、予備選の実施は前例がある。自民党県連は伊藤宗一郎氏の死去に伴う4区の補欠選挙の際、公認候補の選出に当たって実施したことは記憶に新しい。公認候補を選出するのに予備選を行なったのは全国で初の試みだったが、紆余曲折があったものの「公平性が尊重された」と異論はほとんど出なかった。そして、この方法なら自民党県連の体面も保たれることになる。 もっとも、予備選が実施されるような事態になれば、これまで述べてきた局面が様変わりする可能性が高いと見られている。どういうことか。関係者はこう解説・予測するのである。 「第5選挙区、特に石巻地区の有権者は土井喜美夫と齋藤正美が反目し合っていることを知っている。それならば、この2人以外の候補者を立てた方がゴタゴタしなくていいのではないかと、考えても不思議はない。仮りに2人以外の第3の候補者が名乗りを上げ、フレッシュな人物だとしたら、土井も齋藤も勝てないのではないか。有権者が期待しているのは、小泉総理のような自民党の古い体質を引きずらず、断固やり抜くという果敢な政治家だ」 この関係者の分析に狂いがないとすれば、土井喜美夫、齋藤正美の両氏にとって、相争うことは少しも益がなく、協調路線を敷くことが得策ということになりそうである。 いずれにしろ、第5選挙区及び第5選挙区支部は、再生に向けて動き出したことは事実であり、かつて誇った保守王国への復活に向けた政治家の台頭が望まれていることも確かである。第5選挙区支部党員及び自民党県連、さらには党本部が、迷走状態にあるこの選挙区支部とその中で跳梁する次期候補者たちの意向を、どのように収拾し、どのようにして組織力として展開させていくことができるか。賽は投げられたばかりであり、今後も目が離せないことは間違いなさそうである。
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