第4号 1−2ページ掲載記事             #1 #2 #3(2002.新春)

 
  先の知事選で「私が知事でいる限り、準用財政再建団体には転落させない」と大見得を切った浅野史郎知事。だが、それから3カ月も経ていないというのに、早くも切り札とも言うべき「財政再建プログラム」は頓挫してしまった。事実上、浅野県政は破綻したと言える。破綻の構図を改めて検証してみる。
 
 #1 
 

  累積債務約1兆4千億円。この返済利子が一日当たり約2億円。県民一人当たりの借金にして約60万円−−これが現在の宮城県の偽らざる姿である。
 この危機的財政状況は一朝一夕に発生したものではない。バブル経済崩壊後の長引く不況による県税収の落ち込みと、その歳入の不足分を県債発行で凌いできたための公債費の急増などによって、年々積み重なってきたものである。
 この間、浅野県政は平成11年2月に「財政健全化計画」を策定し、同年10月に「財政危機宣言」を発表。その後、平成13年9月に「財政再建の基本方針」を打ち出し、先の知事選告示直前の10月末に「財政再建推進プログラム」を策定した。
このプログラムは平成14年度から17年度までの間の財政再建の道筋を具体的に示したもの。言わば「財政健全化計画」を策定して以来、丸3年を費やして作成された財政再建策の集大成と言える。
 プログラムの概要は人件費・内部管理費の削減、大規模・公共事業の見直し、補助金・外郭団体の見直しなどにより、平成14年度で約211億円を削減。続く15〜17年度には約618億円を削減し、14年度から向こう4カ年度で総額830億円を削減する計画である。県執行部はこれらの措置で、14年度は210億円の財源を捻出し、将来の財源不足に備えて40億円を基金として積み立てる方針だった。
 浅野知事が「私が知事でいる限り、準用財政再建団体には転落させない」と高らかに宣言したのは、このプログラムが策定された直後の知事選告示数日前。この財政再建プログラムに自信をもっていたことにほかならない。
 ところが、その舌の根が乾かないうちにというか、プログラムが策定されて3カ月も経たず、まだスタートもしていない段階で、早くも計画が頓挫してしまったのだ。
 プログラムでは14年度の県税収入を2540億円と見込んでいた。それが一段の景気低迷で、見込み額より170億円も下回る2370億円にとどまる見通しになった。さらに、介護保険の給付負担金などの歳出が増えることになり、総額で200億円の財源不足が新たに生じることになったのである。
 このため浅野知事は、平成12年度から実施している県職員の給与カットを、14年度以降2年間継続することを、1月9日に打ち出した。その内容は@全職員(一般行政職員6千人、県警職員4千人、教員2万人の合計3万人)の給与を2・5%削減する、A課長級以上の管理職手当を10〜20%削減する−−というもの。
これにより向こう2年間で約70億円の人件費削減を図り、財政の穴埋めをする計画である。ちなみに月給34万円の一般職員の場合、年間で10万3千円ほどカットされることになる。
 すでに県執行部と県職員組合などの組合側との交渉が行なわれているが、当然の如く組合側の反発は強い。県職員組合幹部はこう訴える。
「我々はこれまで2年間、給与削減を我慢してきた。しかも知事は財政再建プログラムを策定した際、『職員の給与をカットしなくてもよいプログラムをつくった』と述べている。ところが、その舌の根が乾かないうちに、計画が齟齬を来たしたから、また給与をカットするという。それではあのプログラムは何だったのかと言いたい。
 2年前の給与カットのとき、我々組合側は『2年後はどうなるのか』と知事に質した。そのとき知事は『2年後に私が知事でいるかどうかはわからないから、返答できない』と言った。あのとき知事は言質を与えないために敢えて返答をぼかし、今回の給与カットは最初から計画していたとしか思えない。それに給与カットすることが、財政再建の正当な手法と言えるのかどうか。単に財源不足の穴埋めでしかなく、その場しのぎにしかならない。人件費を打ち出の小槌のように使われるのではたまらない。我々は財政再建プログラムの抜本的な見直しが第一に必要だと考えている。それがなされないのであれば、給与カットには断固反対する」
 給与カットは単に県庁内部の問題にとどまるものではない。総勢3万人を有する県庁は県内最大の経営事業体であり、その家族も含めれば一大マンモス組織である。給与削減に伴い、彼らの消費購買が低下することは、小売業をはじめ民間企業の経営を圧迫し、県の経済を弱体させることになる。そのことは巡り巡って、県の税収がこれまで以上に下回ることを意味する。
 全国の自治体首長の多くが財政危機に頭を痛めながらも、万策尽きたのちに泣いて馬謖を斬るが如く給与削減を断行するのは、それによって職員のやる気が失われるためだけではない。それ以上に、この公僕の組織体がその地域最大の経営事業体として存在しているがゆえに、給与削減に伴う地域経済への影響を慮って逡巡する側面が強いのである。この点、浅野知事があらゆる手立てを講じた末に、給与削減に踏み切ったかと言えば、あながちそうとは言えないのではないか。そのことはのちに詳述する。
 では、なぜ財政再建プログラムが頓挫したのか。最大にして唯一の理由は、県執行部の見通しの甘さに尽きると言える。執行部は今後の経済成長率をゼロベースと想定してプログラムを作成したという。ところが現実にはゼロベースどころか、マイナス成長なことは経営者はもちろん、今やよほどの経済音痴でない限り察知している。つまり、それだけ執行部は現状認識・経済分析能力に欠けており、経営能力がないということになる。そうした人間がつくったプログラムであれば、画餅にすぎず、頓挫するのは時間の問題だったとしか言いようがあるまい。
 しかも、仮りに給与削減策が実施できたとしても、穴埋めできるのは1年度当たり35億円のみ。これに対して14年度では基金の積み立てを打ち切っても、120億円を超える財源不足が発生する。
このため知事は「県債発行や基金の取り崩しで財源を確保していく」と述べている。
 虎の子とも言える基金を取り崩し尽きれば、県の金庫は空っぽになるのは必定。そして県債を増発すれば、そのツケは債務となって後々に重い負担としてのしかかってくる。要するに、これまで行なってきた「無策の策」を、これからも単に繰り返すことにほかならず、このことは知事自ら、財政再建プログラムが頓挫したことを公表したに等しいと言えよう。
 しかも、県が断行するのは職員の給与カットだけではない。地域振興の推進役を果たしている県内市町村の商工会を大幅に統合・再編することも打ち出したのである。
 県の構想は現在、県内に69ある商工会を3分の1の23に統合・再編するというもの。その具体策としては、@各商工会内に置かれている経営指導員の設置数を、指導員一人当たり中小企業300社の現行基準から、経過措置を踏まえながら最終的には下限の企業数を1351社以上とし、それに対して指導員を4人設置する、A企業数が下限の1351社に満たない地域の商工会については合併させる、B商工会の事務局長の現行65歳の定年退職基準を、14年度は64歳にし、15年度以降は63歳に引き上げる、C記帳専任職員やその他の職員については、退職者の補充をせず、定数を上回る職員数を徐々に減らしていく−−という趣旨である。
 これらの措置により、県内全体の商工会の職員総数は、現在の420名から320名に削減される。事実上は100名に及ぶリストラ・大量解雇である。
 県はこの計画を今年4月から適用する方針で、昨年末に各商工会の上部機関である県商工会連合会に提示。今後、双方で具体的な協議を行なう予定だ。だが、大幅な人員削減と大規模な再編策であり、しかも検討する時間が適用開始までわずかしかないことから「乱暴すぎる」という声が商工会側から相次いでいる。商工会会長の一人はこう反論する。
「県が行なおうとしているのは、職員減らしを進めるなど商工会の運営を阻みながら、その挙げ句合併させようというものだ。これでは合併のスケールメリットは得られないし、地域事情、各商工会の位置づけを無視した、初めに合併ありきのやり方には反対する。しかも今回の県の提示は、県が財政危機なことから商工会への補助金を削減しようという思惑としか思えない。財政の破綻のツケを商工会に回されるのは心外だし、言語道断と言うしかない」
 しかも現在、自治体の広域合併が促進されつつあり、それに伴って各商工会も今後の在り方について検討するため「マスタープラン策定委員会」を設置し、やっと端緒についたばかり。このことは当然、県も把握していたことである。そのマスタープランができあがっていないうちに、頭ごなしに人員削減や再編を打ち出すのは、商工会の自助努力を無視した乱暴な押しつけと言えるだろう。
 実際、県はこれまでも商工会に対して無理難題を強いている。商工会は商工会法によって営利の事業活動が認められていない。このため独自の財源は会員による会費収入と、各種保険などの代行手数料収入しかなく、どうしても県と市町村からの補助金に頼らざるを得ない。
 この県の補助金は各商工会によって支給額が異なるが、町の商工会の場合、年に3000万円ほど。これに町からの補助金や会費、手数料、その他を合計しても全商工会の平均収入額は、平成9年度で約5800万円でしかない。このわずかな額で、ある面では県や市町村の自治体以上に地域振興の牽引者として尽力していることを考えると、商工会への評価はあまりにも低すぎるだろう。
 ところが、県はこの補助金を平成12年度から削減し続けている。それも12年度は前年度比11%減、13年度はそれよりもさらに1・7%減らし、来たる14年度では13年度分より2・6%削減する計画である。簡単に言えば、平成11年度の補助金を100とすれば、14年度には85・1まで削られたということになる。

 
 
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