昨年11月から今年3月にかけて、県政界と各市町村に激震が走った。「震源地」は田島良昭・県福祉事業団理事長その人である。この期間、田島氏及びその周辺で何が起こったかというと、次のようになる。
・14年11月19日 福祉事業団内施設「船形コロニー」の入所者の保護者で構成している「船形コロニー育成会」会長が、これまで5年間にわたって総額約5千万円を流用し、使途不明金・不正会計の疑いがあることが発覚。
・14年11月23日 田島理事長が突然「事業団内の知的障害者入所施設を解体する」と宣言。平成22年までに入所者を地域のグループホームなどに移行させる方針を打ち出す。
・14年12月15日 「コロニー解体宣言」に伴い、田島氏が船形コロニー入所者の保護者に対して説明会を開催。保護者から再三質問が飛び交い、不安を抱いている様子がありあり。
・14年12月19日 県議会「外郭団体調査委員会」に田島氏が参考人として出席。「コロニー解体宣言」や経歴について問われる。
・14年12月20日 福祉事業団の理事会で田島理事長が「来年3月末で理事長を退任する」
と発言。「退任後は故郷の長崎県に戻る」と述べる。
・15年1月初旬 田島理事長の退任宣言に伴い、「チャレンジドネットワークみやぎ」の佐藤豊理事長が「田島氏の宮城県慰留の署名運動」を展開。
・15年1月20日 「アジア国際障害者年10周年」に伴い、田島氏が受賞した「内閣総理大臣賞受賞を祝う会」が仙台市のホテルで開催。席上、佐藤豊氏が先に行なった「田島氏慰留の署名名簿」約3千数百名分を田島氏と浅野史郎知事に手渡す。
・15年2月21日 浅野知事が3月末で任期満了になる松木伸一郎副知事の後任に、田島氏を起用する方針を固める。この夜、知事はほとんどの県議に電話し、根回しを図る。
・15年2月24日 浅野知事が共産党、無所属を除く6会派の控室を訪ねて、田島副知事案を説明。
・15年3月3日 田島氏の副知事就任案について、県議会が無記名投票で採決。賛成26、反対35で否決される。この後の取材で田島氏は「宮城県に残ってほしいという署名をいただいた。県に残り、知事を支えていきたい」と語る。
わずか5ヵ月足らずの間に、めまぐるしい動きがあったことがわかるだろう。と同時に、田島氏の変節ぶりも察知できるだろう。これら一連の出来事はマスコミでも報道された。だが、マスコミは出来事は報じたが、肝心の「何故こうしたことが行なわれたのか」「それによってどうなるのか」という本質については一切触れていない。そこで、このレポートではこれら一連の出来事を検証するとともに、浅野知事
田島氏が今後起こすであろう策謀についても探っていくことにする。
まず第一に「船形コロニー育成会会長による不正流用事件」である。この問題と田島氏は無関係のように思われるかも知れない。だが、そうではない。直接・間接に関わりがある。
間接的な面で言えば、こうである。
そもそも育成会は「親の会」という名称で発足し、「入所者やその保護者に不測の事態が起きたときに、お互いに助け合おう」という目的で結成されたものである。具体的に言えば、入所者や保護者がケガ、病気をしたり、あるいは亡くなったときなどのために、事前に会費を集めて運用するもので、今でも地方の集落で行なわれている「相互扶助のための講」の存在に近い。このため会費と言ってもそんなに高額ではなかった。
それが平成11年に現在の「育成会」に改称され、会費もはるかに割高なシステムになった。実は、この育成会への改称と新たな会費システムを強く提唱したのが、この年に福祉事業団副理事長から理事長に就任した田島氏だったのである。田島氏は親の会の幹部に対して「あなた方は自分の子供たちのために、事業団からいいサービスをしてもらいたいと思っているでしょう。より良いサービスを受けるには、それなりのお金がかかる。目的地まで鈍行列車で行くのと、新幹線で行くのとの違いです。わかるでしょう」(当時の親の会の幹部の一人)と説明したという。
田島氏の勧めを受けた親の会は以後、育成会と改称しただけでなく、形態もそれまでの単なる仲間うちの団体から、一般会計(年間3千万円前後)・基金会計に基づいた運用・処理を行なうなど、企業的組織に変貌。その運営内容も福祉事業団に入所者のための措置支援的な費用を提供する一方、独自に施設・サービスの改善を行なうなど、福祉事業団の事業を側面支援する存在として今日に至っている。それだけに、かつての親の会の時代とは比較にならないほどの金額を育成会が扱っており、育成会会長が不正流用した金の財源は、保護者と入所者からもたらせられたものである。
では、田島氏が育成会と直接的に関わるとは何を指しているか。
それは、育成会会長が不正流用した金の一部、もしくは育成会の資金の一部が、田島氏あるいは福祉事業団幹部に還流されている疑いがあることである。その根拠がないではない。
根拠の第一は、育成会会長の不正流用は昨年度までの5年にわたって行なわれていたことが明らかになったものだが、実は育成会の会計担当者には福祉事業団出身者が何名かいるのである。一般企業の常識からすれば、5年間も会計処理が野放図にされていることはあり得ない。そのことからすれば、育成会会長が一人で不正していたとは考えにくい。考えられることは、会計担当者と共謀して行なっていたか、あるいはその金が福祉事業団の誰かに流れていたことを会計担当者が知っていて、それを黙認していたからではなかったか。
根拠の第二は、育成会会長と田島氏のつながりの深さである。この会長はかつて福祉事業団の施設「ほたる学園」が民間に委託され「チャレンジド21」という組織に改組し、新たに施設を建設する際、その運営資金担当責任者に就任していた人物である。「ほたる学園」を民間に委託することを決めたのは田島氏であることからすれば、その重要なポジションである運営資金担当責任者は誰でもいいと言うものではない。当然田島氏の意向が強く働き、田島氏に近い人間として、この育成会会長が選ばれたことは想像に難くない。親の会を育成会に改組するよう提唱したのが田島氏であり、その田島氏に近い人物が会長にいる
この連関が偶然に成されたものとは考えられず、何らかの意図があったと推測しても不思議であるまい。