| パロス 2006 9月号(第19号) ダイジェスト article2 | |||
論評 伊豆沼温泉掘削問題 「それでは長沼はどうなんだ!」 |
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片手落ちで本質を理解していない県と栗原・登米市
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「温泉法上、掘削を止めることはできない」伊豆沼北岸の温泉掘削事業計画が論議を呼んでいる。 (中略) 温泉場の排水で急速に汚染された長沼 反対派の考え方には問題がある。というのも、すでに温泉掘削をして事業を行なっている企業があるからだ。 伊豆沼から直線距離にして約4キロメートル東南に長沼がある。この沼は伊豆沼・内沼同様に8月から約1カ月間「はす祭り」で賑わい、ボート・レガッタ競技の会場やキャンプ場としても知られている。流域面積こそ16.4平方キロメートルと伊豆沼(52.65 平方キロメートル)より狭いが、沼の面積は3.17平方キロメートルと伊豆沼(2.89平方キロメートル)を凌ぐ。 この長沼の塩素イオン濃度が平成15年7月を境にして、それまで13ppm ほどだったのが突如27ppmまで上昇、現在はさらに増して36ppm にまでなっている(伊豆沼の最高値は33ppm だが、現在は21ppm 程度。グラフ参照)。なぜ急激に濃度が増したかといえば、15年7月にロト・ヴィーナスという企業が長沼の畔に温泉浴場をオープンし、浄化しているとはいえ、少なからずその温泉排水が長沼に流されていることによる(このことは県の環境対策課でも認めている)。 (中略) だから「伊豆沼の温泉掘削を認めるべきだ」と言うのではない。逆に「伊豆沼付近での掘削が環境保全上よくない」というのなら、必然的に「では長沼はどうなのか」との疑問が出てくるし、出てこなくてはおかしいのではないかと思うのだ。ところが、村井知事、栗原・登米両市長にしても、県議会にしても、伊豆沼については注目し、論議・検討はしているが、すでに著しく汚染している長沼については関心がないのか、一言も発していない。 伊豆沼・内沼がラムサール条約に登録されているから重要な沼地で、登録外の長沼は重要ではないという考えはよもやもっていないとは思うが、自然保護の観点というのであれば、この不公平な扱いは片手落ちであり、一貫した環境行政の立場からして整合性を欠いているのではないか。 さらに言えば、伊豆沼・内沼の環境保全に対して、県並びに県議、登米・栗原両市長は失礼ながら本質を理解していないのではないかと思われる。 (中略) この二つの沼は地形的に付近の川と高低差がほとんどなく、沼自体も平坦なため、沼の水が極くわずかしか移動しない。そのため遊水池・溜まり沼として重要な役割を担っているが、反面、水深が1メートルもないことと、昭和の初めから30年頃にかけて大規模な干拓を行ない(伊豆沼)、それまでの面積の約3分の1が失われたこともあって、水質が汚れやすい欠点がある。 このため生活排水や畜産排泄物については下水道の整備や排泄物処理施設が設けられ、汚染しないように努めているが、問題は鳥の糞と餌さの残り物である。冬季にもなると、伊豆沼にはガン、カモ、ハクチョウなどが飛来し、その数は6万羽 7万羽にもなる(年々その数は増えつつある)。これらの鳥が餌さを取り糞を垂れ流せば、必然的に沼は汚れる。 ラムサール条約遵守か、環境保全か つまり、伊豆沼・内沼の環境保全を行なおうとするなら、これらの鳥の飛来数を減らす必要があるということだ。ところが、県や県議会並びに登米・栗原両市は「環境保全とラムサール条約の遵守」という、言わば相矛盾することを行なおうとしている。そして、伊豆沼の汚染対策の本質はこの点に尽きると言えるのだが、この矛盾に気がついていないのではないかと思われる。 極言すれば、ラムサール条約はあくまで「水鳥(渡り鳥)の生息地として重要な湿地に関する」ものであって、その一環として「湿地の環境保全」を謳っているものである。主役は鳥である。一方、環境保全の本質は自然環境・生態系を維持し、すべてのものが共生できるように努めることにある。両者は似てはいるように思えるが、その差は意外に大きい。 いずれ、ラムサール条約を遵守するのか、それとも本質的な環境保全を行なうのか、関係機関は二者択一を迫られるに違いない。(中略)
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