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全 県

2004年
4月
第13号
怒れ! 建設業者
経営を蝕む「宮城方式入札制度」の矛盾

過当競争・ダンピング横行・品質劣化の弊害が−−

 

 











  宮城県が施行している「一般競争入札制度」に対して、建設業界から批判が高まっている。入札制度の公正・透明性を図るとは言うものの、その実、企業経営を弱体化させる弊害が生じているからだ。制度の矛盾をお伝えする。

  県が入札制度の改正を実施したのは、平成13年4月のこと。その2年前から現職県議3人が競売入札妨害罪などで逮捕・起訴されたことで、県議会が不祥事の再発防止と入札制度の改善を決議。これを受けて県が改正・施行に踏み切ったものだ。
 改正内容は12項目に及ぶが、中でも主眼は以下の3項目と言えるだろう。
@一般競争入札の適用範囲の拡大と入札複合方式の試行 一般競争入札の適用範囲を現行の1億円以上から1千万円以上に拡大。1千万円以上の工事は、発注者(県)が一般競争入札・指名併用型一般競争入札・指名競争入札・無作為抽出型指名競争入札の中から選択して発注する。
A低入札価格調査制度の適用範囲の拡大 競争性の促進と低コスト化を図るため、従来の最低制限価格制度に代えて低入札価格調査制度を実施。適用範囲を現行の5千万円以上の工事から、1千万円以上に拡大する。
B予定価格の事前公表の試行 1千万円以上の全ての工事について、当分の間予定価格を事前に公表する。

 「施工実績問わず」で無秩序に

 −−これらの項目のうち@は「宮城方式」と呼ばれ、「他県にはない画期的、独自の入札制度」(県土木部)だという。県はこの改正の目的を「一般競争入札の拡大を定着させること」と明示。「宮城方式」を実施することによって「入札制度の適正化と財源の効率的な活用ができる。併せて誰でも入札に参加でき、受注機会が増えることから、個々の建設業者の経営力・技術力に応じた公正な競争が促進できる」と、そのメリットを強調している。
 では実態はどうか。「メリットどころか弊害が起きている」と建設業界内では囁かれている。はじめに一般競争入札制度とそれに連なる改正要項について記していくことにするが、弊害の最たるものは、過当競争になったことである。
 改正前の入札制度では「過去の施工実績」が評価基準となっており、これが企業の技術力・信用度を裏付ける重要な尺度になっていた。同時に「地元業者の育成」についても、例えば県北地域の工事ならば地元業者を優先的に入札・落札できるように配慮がなされていた。これによって、ある意味で「秩序ある、地域バランスのとれた入札」が行なわれていたのである。
 ところが、改正後の県発注工事の入札公告は「宮城県内に本社(本店)を有し、工事現場に技術資格者が配置できる」という条件を充たしていれば「施工実績は問わない」というもの。つまり、県は改正前に盛り込まれていた条件・配慮を全く取り払ってしまい、事実上、無条件の入札制度にしたということである。
 宮城県の普通建設費は平成7年度の3506億円をピークに、その後は年々減少し、平成15年度は1455億円。対7年度比で実に41・5%に下がっている。県発注工事がそれだけ激減していることになり、業者にとっては死活問題である。この状況下で無条件の入札制度にすれば、過当競争になるのは当然だろう。
 「それまで下請けだった業者が、改正後は元請けになっているケースがかなり多い。何しろ技術者がいさえすれば、どんな業者でも入札参加できるわけだから。例えて言えば、自動車学校で学科だけで実地をしていない者が免許を取ったようなもので、優良な業者は皆嘆いています」(ある建設業者)
 「改正後は県北地域の工事を県南の業者でも入札・落札できることになった。選挙で言えば『全県1区』になったようなもので、地元業者の育成なんて、どこかに吹っ飛んでしまったね。このため当初は一つの工事入札に百社近くの数の業者が応募して混乱が起きていた。ところが全県1区だから、宝くじに当たるようなもの。次第に業者が入札に参加しなくなり、そのため参加企業が1社のみで100%近くの落札率で落札した工事もあるというように、おかしな現象が起こっています」(別の業者)
 実際、ある落札業者に対して県が示した記載事項には「この業者は過去の成績は悪いが、今後は悪くさせないように見ながら仕事をさせていく」と記されている。これでは施工実績を度外視したばかりでなく、県自らが業者と癒着しているようなものだろう。
 この件について疑問をもった業者が、県に資料開示を求めたところ、開示資料が黒塗りだったり、開示されなくなったりしたという。浅野史郎知事並びに県は「入札の公正性・透明性」を掲げているが、「県そのものが不公正・不透明だ」という業者は少なくない。

 県がダンピングを奨励している

 しかも、冒頭に触れた県議会の決議事項の中には「入札参加登録業者の資格要件の充実強化」が明示されている。改正後の「過去の施工実績を問わず」という県の無条件入札制度はこれに反しており、明らかに矛盾していることになる。
 こうした技術力のない業者が落札すればどうなるか。「1千万円、2千万円クラスの工事なら、まだ何とかできるだろうが、それ以上になれば丸投げするしかない。事実、そうした工事が結構ある」と中堅業者は洩らす。県は「宮城方式」の施行によって「競争性の確保」を謳っているが、実態は業者のピンハネ化・ダミー会社化をもたらしていると言えるだろう。
 品質の面でも影響が出てきている。「土地が傾斜していたり、水が漏れたりという工事が目立ってきている」(ある業者)というのだ。技術力がないがゆえに、杜撰な手抜き工事が行なわれていることにほかならない。
 一般競争入札制度そのものだけ見ても、こうした弊害が出ているが、前掲したように県はこれに「低入札価格調査制度の適用範囲の拡大」と「予定価格の事前公表」を組み込んで施行している。この二つの制度は言わばセットになっており、発注工事の予定価格を事前に明らかにし、入札参加業者が提示した入札価格の中で最も低い価格の業者が落札できる仕組みになっている。
 県がこの二つの制度を導入した背景には、県議会の決議項目に盛り込まれていたことと、それまでに仙台市民オンブズマンの談合追及があったことが大きい。とりわけオンブズマンの「落札率の高い工事は談合の可能性が極めて高い」という指摘に県が左右されたことは否めず、その結果「落札率を低くすることが談合排除になる」との考えから、この二つの制度が改正条項に加えられたと思われる。


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