会員専用ナビ
Topics

2004年
4月
第13号
ベガルタ仙台「惨敗」の原因
レベル低く、戦術ミスのダブルパンチ

 

 











  「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」−−プロ野球の野村克也前監督のこの格言は、まさに正鵠を射ている。負けるにはそれだけの原因がある。
 サポーターや東北ハンドレッド関係者は、ベガルタ仙台がまさかこれほどぶざまな連敗をするとは思わなかったろう。「一昨シーズンはJ1の強豪を相手に、一時は首位にも立ったチームがどうしたことか」と。

サポーターの声援にどう応えられるか

 補強のミスと「多国籍軍」の守備

 冷静に考えれば、あのときの勝利は「まぐれ」だったことがわかる。一昨年の2002年はW杯があった。そのため各チームの主力選手は日本代表チームに集結しており、本来の戦力にはほど遠かった。ベガルタは言わば「空き家のチーム」に勝っただけなのだ。それが証拠にW杯終了後、各チームが本来の戦力を整えた途端、ベガルタは敗戦街道をひた走ることになった。
 当時の戦力でも勝てないのに、今シーズンのベガルタはそれよりもレベルが格段に落ちている。主力選手を放出・引退させ、代わりに新たな選手を獲得したことによるものだが、これは明らかにチームづくり・補強の失敗である。敗因の大きな理由はここにある。
 補強の失敗はもう一つある。守備陣を「多国籍軍」にしたことだ。ベガルタのディフェンス陣は日本人・ブラジル人・スロバキア陣の混成である。彼らは自国語しか解せない。これではコミュニケーションがとれず、必然的に瞬時の連携プレーができようもない。
 加えて、戦術にも問題がある。昨シーズンまでのベガルタは4・4・2という、ディフェンスラインに4人を配するフォーメーションで戦ってきた(それでも失点は多かった)。だが、今シーズンから指揮をとるベルデニック監督は3・5・2の布陣を敷いている。レベルが相対的に低いのに加えて、守備陣が手薄になっている。
  開幕当初の大量失点の原因は、この多国籍軍とフォーメーションによる守備力の低下に尽きている。
 開幕戦2戦に惨敗したため、ベルデニック監督は守備に重きを置く布陣に修正し、攻撃はカウンターアタックの戦法をとることにした。失点を極力抑え、少ない得点で勝つという戦術である。
 しかし、この戦法が奏効するとは思えない。確かに失点は少なくなるだろう。だが、カウンター攻撃は何よりスピードが要求されるのだ。走力が劣り、スタミナ切れのベガルタで、この戦法が機能するだろうか。しかもカウンター攻撃は一見、派手だが、得点の確率は意外に低い。何よりベルデニック監督本来の戦い方ではない。攻撃・守備の双方で破綻する恐れが十二分にあり、また軌道修正を余儀なくされるのではないか。まさに「あちらを立てれば、こちらが立たず」の状態になりそうである。
 そもそもベルデニック監督がめざすサッカーは、ベガルタでは無理だと思われる。ベルデニック監督のサッカーは東欧型であり、他の西欧型やラテン系に比べて選手に多くの運動量を要求する特徴をもつ。中盤に5人を配置するのはそのためであり、選手は攻守両面で走り回り、パスをつないでいくという戦法である。
 ところがベガルタの場合、レベルの低さもさることながら、それ以上に基礎体力・走力が劣っている。このことは昨シーズンから今シーズンにかけて、試合後半にベガルタの選手の動きが緩慢になり、失点するケースが何度も繰り返されていることからも明らかだ。つまり、ベルデニック監督がめざすサッカーは、ベガルタでは成し得ないということである。

 発足10年で監督は8代目

 この点についてはフロントの責任が大きい。過去の教訓を生かしていないからだ。というのも、ベルデニック監督はかつてブランメル仙台を率いたエルスナー監督の弟子筋にあたる(両氏ともスロベニア出身)。当時、エルスナー監督はもちろんのこと東欧型のサッカーをブランメルに持ち込んだ。だが、余りのレベルの低さに驚き「ここでは私のサッカーはできない」と洩らし、結果的に敗戦の責任をとり、半年そこそこで辞任してしまった。
 その戦術の後継者であるベルデニック氏を、東北ハンドレッドは監督に就任させた。フロントは「東欧型のサッカーがベガルタに合う。今のベガルタのレベルなら東欧型でも対応できる」と判断したのだろうか。疑問が残る監督人事ではある。
 現在のベルデニック監督の心境は、ひょっとするとかつてのエルスナー監督と同じかも知れない。今はエルスナー監督の二の舞にならないことを祈るのみである。
 ベガルタのこれまでの足跡を振り返れば、勝つことに汲々としてきた。サポーターが勝利を願うのは当然のことだが、フロントの東北ハンドレッドまでがサポーターと同じレベルでベガルタを見ている。チームにとってこのプレッシャーたるや想像以上の負担になっていることは否めないだろう。
 勝っているときはいいが、負けが込むとブーイングの嵐。翌シーズンにはサッカースタイルが簡単に代えられる。事実、ベガルタはブラジル型→東欧型→西ドイツ型→東欧型と転変を繰り返してきた。もちろん、そのたびに監督も代わる。チーム発足して今年で丸10年だが、ベルデニック監督が8代目である。如何にめまぐるしく代わっているかがわかるだろう。
 まさに「場当たり的」であり、これではチームカラーがないに等しい。当然、選手はやりきれないだろうし、Jリーグの理念である「地域密着」もできるはずがない。
 今のベガルタに「勝利の特効薬」はない。恐らく今シーズンは低迷状態が続き、下位に甘んじる結果になりそうである。しかし、それでも得られるものが、少なくとも一つはある。「負けた原因を分析し、その弱点を修正していく」ことだ。もちろん、それを行なうには時間がかかるだろう。しかし、それなくては今後の光明は見い出せない。
 「負けた結果」よりも「負け方がどうなのか」。来シーズンのベガルタは正念場を迎えることになるが、その前舞台である今シーズン、ベガルタの真価が問われている。

(※次号で『東北ハンドレッドの課題』を掲載いたします。)

BACK to membersindex
 
HOMEWEB会員募集 冊子購読申し込み